バハレーン/現在の政治体制・制度
概要
現在の政治体制は、2002年に制定された憲法に基づいており、国王が強い権力を持つ立憲君主制である。正式な国号はバハレーン王国Mamlakat al-Bahrain、国王malikはハマド・ビン・イーサー・アール・ハリーファHamad bin Isa Al Khalifa、皇太子は国王の長男であるサルマーン・ビン・ハマド・ビン・イーサー・アール・ハリーファSalman bin Hamad bin Isal Al Khalifaである。バハレーンは1971年に英国保護領から独立し、制憲議会選挙を経て1973年に憲法が制定され、国号はバハレーン国Dawlat al-Bahrain、君主は首長amirを称していた。同年に国民議会選挙が実施されたが、1975年の議会解散および憲法停止により首長親政となった。1999年に即位したハマド首長(現国王)は、国民行動憲章を策定して国民投票に付した。2001年2月14日・15日に実施された国民投票によって国民行動憲章が承認されたことを受け、新憲法の制定に着手し、2002年2月14日に公布した。憲法は、2011年のアラブの春による反政府デモと、その後開催された国民対話集会の答申を受け、議長の権限拡大を中心とした修正がなされ、2012年5月3日にハマド国王により修正憲法が公布された。
立法権
立法権は、国王と議会に付与され、法律は国王の裁可を得て公布される。議会は二院制で、議員を普通選挙で選出する下院(代議院Majlis al-Nuwab)と、国王が任命する上院(諮問院Majlis al-Sura)から成る。上下両院は対等な立法権を有する。上下両院とも議員定数は40議席で任期は4年である。下院議長は下院にて選挙により選出し、上院議長は国王が任命する。
全ての法律は下院から上院への順で議決を経て成立するが、両院の議決が異なった場合は両院合同会議である国民議会Majlis al-Wataniでの議決を経て成立し、国王へ裁可のため送付される。国王による裁可が6カ月を経てもなされない場合は、国王による裁可がなされたものとみなされ、法律として公布される。国王は議会で議決により承認された法律案を再審議のため議会に返付する権限を持つ。議会に返付された法律案が総議員数の3分の2以上の賛成によって改めて議決・承認された場合、1カ月以内に国王は裁可・公布する。
国王は法律案の提出権および憲法修正案の提出権を有する。議会の休会中または解散中には法律と同等の効力を有する勅令を発することができるが、議会の再開時または新しい議会が召集された時には議会の議決による承認が必要である。議会が承認しなかった場合、勅令は発布に遡って失効する。また、内閣(閣僚評議会Majlis al-Wuzara)が提出する財政に関する法律案および緊急の審議を要求する法律案については、下院と上院でそれぞれ15日以内に議決される。両院の議決が異なる場合には、国民議会にて15日以内に議決される。この期間中に議決できなかった場合、国王はその法律案について勅令として発布できる。
下院は、大臣に対する罷免権をもつ。下院で大臣に対する問責質問istijwabが行なわれたのち、不信任決議案が下院議員の3分の2以上の賛成で議決された場合、その大臣は辞職したものとみなされる。首相に対しては不信任決議案を提出することはできないが、下院議員の3分の2以上が首相に協力できないと判断した場合、国民議会に諮られ、全議員の3分の2以上が同意した場合、議会が首相への協力を拒否したとみなされ、国王が新しい首相を任命(内閣総辞職)または下院を解散する。議会の解散権は国王のみが有する。
いずれにせよ、国王任命による上院のため、国王および政府の意向に反する下院の議決が国民議会で承認される可能性はほとんどなく、勅令が否決されることもない。国王による勅令の頻繁な発布や内閣が提出する法律案の緊急審議規定に加え、上院と下院は同じ議場で曜日を変えて本会議を開催しており、議会での審議には時間的な制約が大きい。そのため、野党は議会に実質的な権能はなく、単なる勅令の追認機関だと批判している。
行政権
行政権は、国王と内閣に付与されている。首相および大臣は議会選挙の結果とは関係なく国王が任命しており、議院内閣制ではない。首相は1971年の独立以前から現国王の叔父であるハリーファ・ビン・サルマーン・アール・ハリーファKhalifa bin Salman Al Khalifaが半世紀にわたり務めていたが、同首相が2020年11月に亡くなったのち、後任にサルマーン皇太子が任命された。閣僚の定数は特に定められていないが、サルマーン皇太子の首相任命時の閣僚数は24名で、うち8名が王族から任命されている。
司法権
司法権は国王の名において行使され、国王を議長とする最高司法評議会が裁判官の人事を決定している。法律2002年第27号に基づき憲法裁判所が設置され、2004年より業務を開始している。憲法裁判所判事は7名でいずれも国王により任命される。
地方行政
法律2002年第17号「地方行政に関する勅令」に基づき、地方行政単位として首都県、ムハッラク県、北部県、中部県、南部県の5つの県が設置された。地方行政の所管官庁は労働地方行政都市計画省で、県知事は国王が任命する。各県にはそれぞれ地方評議会Majlis al-Baladiが設置され、各評議会の定数は下院選挙で各県に配分された小選挙区数と同数とされた。2006年の第2回下院議会選挙以来、地方評議会選挙は下院選挙と同じ小選挙区制で同じ日程で投票が行われている。地方評議会は条例などの議決権はなく、県が所管する行政や都市計画、予算についての助言と監督を行う。2014年9月の選挙区割り見直しの際に中部県が廃止され、現在は4県に再編されている。