中東・イスラーム諸国の政治変動
リビア
選挙
2019年10月7日

リビア/選挙

「国民議会」選挙(2012年7月)

2011年10月20日のムアンマル・カッザーフィー(カダフィ)殺害後、反体制派勢力である国民暫定評議会のムスタファー・アブドルジャリール議長は10月23日に「リビア全土の解放」を宣言した。「憲法宣言」第30条には、リビアの解放(カッザーフィー政権の崩壊)宣言後、国民暫定評議会は移行政府として再編成され、3ヶ月以内に①国民議会選挙のための法案整備、②高等選挙委員会の任命、③国民議会選挙への呼びかけを行うことが定められていた。また、リビアの解放後8ヶ月以内に国政選挙を行い、それから1年以内に議会と大統領選挙を実施すると定められていた。

2012年7月7日、国民議会選挙が実施された。定数の200議席のうち80議席が政党別に選出される比例代表方式、残りの120議席が個人選出方式に割り当てられた。人口比などに基づき、国内主要3地域の議席配分は、首都トリポリを含めた西部100、東部60、南部40と定められた。女性や少数民族向けの議席割り当て(クォータ)はなかった。

選挙では、142の政党から合計で約3,700人(個人候補者約2,500人、比例代表候補者約1,200人)が立候補し、女性候補者も600人を超えた。選挙委員会の発表によれば、投票率は約60%(投票者170万人/登録有権者約280万人)という結果となった。

しかし、議席配分に不満をもつ東部地域では、連邦化や東部の自治権向上を主張する勢力がボイコットを呼びかけた。放火されたり、脅迫により閉鎖されたりした投票所もあった。

議席を獲得した政党は以下の通りである。

  • 国民勢力連合:39 議席(得票率 48.8%)
  • 公正発展党(ムスリム同胞団系):17 議席(21.3%)
  • 国民戦線党:3 議席(3.8%)
  • 民主主義と開発のための Wadi Al-Hayah 党:2 議席(2.5%)
  • 祖国のための連盟:2 議席(2.5%)
  • 国民中道潮流:2 議席(2.5%)
  • その他:15 議席(18.8%)

「憲法起草委員会」選挙(2014年2月)

2014年2月20日、憲法起草委員会(Constitutional Drafting Assembly)の選挙が実施された。「憲法宣言」では国民議会が60人の憲法起草委員を任命すると定められていたが、2012年7月の国民会議選挙の直前に、国民暫定評議会が同宣言を修正し、憲法起草委員会を国民投票によって選出すると決定した。そして、2013年4月に国民議会が同委員会の選挙の実施を決議した。

「60人委員会」とも呼ばれる憲法起草委員会の60議席は西部、東部、南部の3地域に各20席に振り分けられ、そのうち女性に6議席、少数民族(ベルベル、トゥアレグ、トゥーブ)に2議席ずつが割り当てられた。国民議会議員、国民暫定評議会議員、カッザーフィー政権の幹部、軍人、過去に有罪判決を受けた者には立候補資格は与えられなかった。すべての議席は個人選出方式に割り当てられた。

定員60名に対して立候補は649人(うち女性64人、少数民族20人)であった。選挙日が公式に発表されたのは2014年1月下旬(選挙日の約3週間)であり、有権者が候補者に関する情報を得る機会は限定的であったとの指摘もある。さらに、ベルベル(アマージグ)とトゥーブの人々が、少数民族向けの議席割当(2席ずつ)は過小であり、憲法にマイノリティの権利が反映されないとして本選挙をボイコットした。治安の悪化や地元住民の反発により、1,496の投票所のうち115ヶ所では投票が実施されなかった(このうち一部では再選挙が実施された模様である)。

結果として、有権者登録は約110万人、そのうちの投票率は約46%(投票者約50万人/登録有権者約110万人)にとどまった。60議席のうち13議席は空席となった。

「代表議会」選挙(2014年6月)

2014年6月25日、代表議会選挙が実施された。国民議会選挙とは異なり、定数の200議席のすべてが個人選出方式に割り当てられた。これは、選挙運動が暴力化や政党間の抗争を防ぐためだとされる。32議席は女性に割り当てられた。

選挙では、1,714人(男性1,562人、女性152人)が立候補した。ただし、カッザーフィー政権の元職員が公職に就くことを禁止する「政治的隔離法」にもとづき、41人の候補者は資格をはく奪された。

国民議会の機能不全やリビア全土での治安悪化などを受けて、政治に対する国民の信頼は低下しており、有権者登録数は約151万人、投票率は42%(投票者63万人/登録有権者約151万人)という結果となった。2012年の国民議会選挙と比較すると、投票者は約110万人、登録有権者は約130万人減少した。投票所の閉鎖や候補者の不在といった理由から12の議席は埋まらなかったが、再選挙は実施されなかった。

あくまで暫定的立法府であった国民議会とは異なり、代表議会は正式な立法府と位置付けられた。しかし、代表議会の発足をもって解散する予定であった国民議会の一部の議員が、代表議会の設立手続きが違法であるとして国民議会の存続を主張し、独自の内閣である「国民救済政府(National Salvation Government)」を形成した。ここにおいて、リビアに2つの政府が並存する事態が発生した。国民議会(在トリポリ)と代表議会(在トブルク)の対立は全国に拡大し、リビア国内の治安悪化やジハード主義組織の伸長につながった。

次期大統領・議会選挙に向けて

次期の大統領・議会選挙に向けた有権者登録は、高等選挙委員会(Libya High National Elections Commission)によって2017年12月6日に開始され、2018年3月31日に締め切られた。同委員会によれば、締め切り時点での登録者は在外も含めて243万4,654人であり、有権者全体の53.3%に当たる。選挙に向けて、リビア国内に1,912の選挙事務所と7,000の投票所を設置される予定である。選挙は2019年中に行われる予定であったが、4月からのトリポリ周辺での衝突を受けて、実現は危ぶまれている。

2019年9月時点で大統領選への出馬を表明している者は少数である。2018年3月、元UAE大使のアーリフ・ナイードが、大統領選への立候補を表明した。ナイードは1990年代後半からリビア通信公社に勤務し、現在はヨルダンに拠点を置くテレビ局を経営している。彼はエジプトとUAEから支援を受けているとされ、またハフタル支持を公言している。

また同月、カッザーフィーの次男であるサイフ・イスラームが、「リビア解放人民戦線(Popular Front for the Liberation of Libya)」という団体を通じて出馬を発表した。ただし、サイフ・イスラーム自身は2017年に釈放が発表されてから一度も公の場に姿を見せておらず、チュニジアで行われた今回の出馬表明の場にも現れなかった。

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