2011年の「アラブの春」にともなう内戦とカダフィ政権崩壊を経て、現在(2019年9月時点)のリビアでは議院内閣制が採用されている。その根拠は、「憲法宣言(Constitutional Declaration)」(2011年8月締結)および「リビア政治合意(Libyan Political Agreement)」(2015年12月締結)である。

リビア政治合意にもとづき、「国民合意政府(Government of National Accord)」が2016年2月に結成された。同政府は最高意思決定機関「執行評議会(Presidential Council)」と内閣からなる行政機関である。「執行評議会」は首相1名、副首相3名(東・西・南の地域から1名ずつ選出)、国務大臣2名で構成される。立法府はリビア東部のトブルクに拠点を置く「代表議会(House of Representatives)」が担う。また、「国家高等評議会(High Council of State)」は国民合意政府の諮問機関として、同政府が提出する法案や国際的合意に対して、法的拘束力のある意見を提示できる。

「憲法宣言」は内戦中の2011年8月3日、反体制派勢力である国民暫定評議会(National Transitional Congress)によって締結、同月10日に発表された。同宣言はいわば草案であり、修正後、国民投票によって3分の2以上の承認を得れば正式な憲法として制定される。

同宣言が締結されたときは、国民議会の設立後すみやかに憲法起草委員が任命され、正式な憲法の起草・制定が行われると見込まれていた。しかし、後述の通り憲法起草委員を選挙によって選ぶこととなり、またリビアの政治情勢が混乱したことから、2019年9月に至るまで正式な憲法は制定されていない。代わりに、国民議会や代表議会は「憲法宣言」を修正することで政治プロセスを進めてきた。

「憲法宣言」第1条には、リビアが民主国家であること、首都はトリポリであること、国教はイスラームであり、イスラーム法(シャリーア)が法制度の根源であるが、国家は非ムスリムにも信仰の自由を保障すること、公用語はアラビア語であることが定められている。また、「少数民族」という言葉は用いられず、「リビア社会の構成要素(components of the Libyan society)」として示され、アマージグ(ベルベル)、トゥーブ、トゥアレグに対して言語的・文化的権利を保障するとされている。

第4条には、国家は、政治的多元主義と多党制に基づく政治的民主制の確立に努め、権力の平和的・民主的交代を実現すると定められている。

第9条には、祖国の防衛、国家の団結の維持、文民統治・憲法・民主的制度の維持、市民の価値観の順守、地域・部族・氏族にもとづく対立との戦いは、全国民の義務であると定められている。

カッザーフィー政権期の法制度について、第35条では、既存の法律は修正・廃止されるまで、「憲法宣言」の内容と矛盾しない限りにおいて有効であると定められている。前政権で定められた法律における政治機構への言及は、国民暫定評議会や今後の移行政府に置き換えられる。また、カッザーフィー政権期の正式な国名「大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒーリーヤ国(Great Socialist People’s Libyan Arab Jamahiriya)」は、リビアに置き換えられる。