パキスタン正義運動党PTI(Pakistan Tehreek-e-Insaaf)

1996年、元クリケットのパキスタン代表キャプテンを務めたイムラン・ハーンによって結成され、2018年から与党となった。政治傾向は中道であり、政権樹立以来、「新しいパキスタン」という標語を掲げ、福祉国家の建設を目標に掲げている。

ハーン党首はクリケット選手として抜群の知名度があったが、政党として支持を集めるまでには年月を要した。結党後最初の選挙であった1997年には一議席も獲得できず、2002年選挙でハーン党首だけが初当選し、2008年の選挙はボイコットという経緯を辿って、2013年に初めて第3党として躍進した。次の2018年の選挙では若年層からの強い支持を基盤に、とくにKP州、パンジャーブ州などで支持を集めて与党となり、ハーン党首が首相に就任した。2021年8月現在、パンジャーブ州およびKP州議会、ギルギット・バルティスタンおよびアーザード・ジャンムー・カシュミール議会の与党となっている。

パキスタン・ムスリム連盟ナワーズ派(PML-N:Pakistan Muslim League Nawas Faction)

1993年、イスラーム民主連合(Islamic Democratic Alliance)が解散して独立した政党で、ナワーズ・シャリーフが設立し、2017年まで党首を務めた。ナワーズ・シャリーフはイスラーム民主連合時代の1990年以来、3回にわたって首相を務めた。政治的な立場は中道右派。

イスラーム民主連合とは、1985年にジアーウル・ハク大統領が選挙を実施するにあたり、その支持政党としてムハンマド・ハーン・ジュネジョーが結成したムスリム連盟から、1988年ハク大統領の死後、フィダ・ムハンマド・ハーンが多数の党員を伴って分裂し、右派政党や宗教政党結成した連合である。イスラーム民主連合は1990年の選挙に勝利してナワーズ・シャリーフが首相となった。1993年にイスラーム連合は解散し、パキスタン・ムスリム連盟ナワーズ派と称した。パキスタン人民党(PPP)とともに1990年代民主化時代の二大政党制を担った。シャリーフ家の地元であるパンジャーブ州ラーホールを拠点とする。

結党以来党首を務めたナワーズ・シャリーフは過去3回にわたって首相を務めたが、汚職や脱税などで訴追を受け、2017年に党首の資格なしとの最高裁判決を受けたため、弟でパンジャーブ州知事シャハーバーズ・シャリーフが党首となった。2018年の選挙では下院の議席を大幅に失い下野した。地盤であるパンジャーブでも敗北を喫し、州議会の与党の座も失った。

パキスタン人民党(PPP:Pakistan Peoples Party)

1967年ズルフィカル・アリー・ブットーが結成した。中道左派、社会民主主義を理念とする。1970年以降5回にわたって政権党となった(1970年、1977年、1988年、1993年、2008年)。ズルフィカル・アリーが1977年ジアーウル・ハクによるクーデタで政権を追われ処刑された後は娘のベーナジールが党首を務めたが、ベーナジールが2007年に暗殺されると、夫ザルダリと長男ビラーワルが共同総裁に就任した。現在はザルダリが総裁、ビラーワルが議長となっている。

1988年にジアーウル・ハク大統領が飛行機事故死した後、民主政回復を牽引する政党となり、ナワーズ・シャリーフのイスラーム民主連合(後にパキスタン・ムスリム連盟ナワーズ派)とともに二大政党制を確立した。1999年10月のクーデタ以降は、ムシャッラフ政権に対抗する民主勢力として2008年にはムシャッラフ大統領を辞任に追い込み、史上初めて議会の力で軍政を終結させる中心勢力となった。2012年にギーラーニー首相が法廷侮辱罪で失職した後、影響力が後退し始め、2013年、2018年の選挙では野党となった。

統一民族運動(MQM: Muttahida Qaumi Movement–Pakistan)

学生運動組織を母体として、1984年にアルターフ・フセインによって創設されたムハージル民族運動(Muhajir Qaumi Movement)を前身とする。1991年までにカラチを中心とするスィンド州のウルドゥー話者コミュニティーの圧倒的代表政党となった。1997年に名称の「ムハージル(分離独立時のインドからの移民を意味する)」をムッタヒダ(統一)に改め、統一民族運動とした。ムシャッラフ政権下では与党PML-Qと強調した。

2017年にファルーク・サッタルがアルターフ・フセインとたもとを分かち、統一民族運動(パキスタン)となり、アルターフ・フセインの党は統一民族運動(ロンドン)となった。

統一行動評議会(MMA)Muttahida Majlis-e-Amal

2002年の選挙に際して、イスラーム党Jamaat-e-Islam、イスラーム・ウラマー党Jamiat Ulema-e-Islam (F)などの宗教政党が連合して結成した政党で、党首はウラマー党のファズルル・ラフマーン、政治傾向は右派から極右に位置する。当時のムシャッラフ政権がアメリカの同時多発テロ後の対テロ戦争に協力したことに反対して、2002年の選挙に宗教勢力を立候補・当選させることを目的として結成された。

パキスタン・ムスリム連盟(カーエデアーザム派)Pakistan Muslim League-Quaid-e-Azam

2001年にムハンマド・アズハルが中心となって、ナワーズ派から分裂して結成された。当時のムシャッラフ軍事政権を支持する政党として、2002年の選挙で大勝した。2004年にさらにたのPML分派と合流して与党として勢力を確立したが、2008年の選挙ではPPP、PML-Nに敗北し、下野した。党首は、チョウドリー・シュッジャード・フセインが務める。

アワーミー国民党Awami National Party

パシュトゥーンの民族政党として、ワリー・ハーンを党首として1986年に結成された。ワリー・ハーンは独立運動期にインド国民会議を支持したアブドゥル・ガッファール・ハーンの息子で、当時も現在も明確な政教分離主義をとる。パシュトゥーンが居住するKP州とバローチスターン州の一部を地盤としていたが、2018年の選挙ではPTIの躍進によりKP州の下院選挙区と州議会議席の多くを失った。

バロチスタン国民党Balochistan National Party

バロチスタンの民族政党で、平和的な方法でバロチスタン州に自治の拡大を求める。現党首はアクタル・メンガル。

バロチスタン人民党Balochistan Awami Party

2018年にPML-NとPML-Qの支援を受けてバロチスタンで結成された。同年に行われた選挙でバロチスタン州最大勢力となり、連邦議会と州議会で連立政権の一翼を担う。また、隣のKP州にも議員を4人出している。党首はジャーム・カマル・ハーン。