選挙制度
現在の選挙制度は、「政治的権利の行使に関する勅令」(法律2002年第14号)と「諮問院および代議院に関する勅令」(法律2002年第15号)に基づく。国政選挙は代議院(以下、下院と表記)のみ実施される。下院の定数は40議席であり、議員の任期は4年である。選挙権はバハレーン国籍を持つ21歳以上の男女にあるが、有権者登録が必要である。被選挙権は30歳以上のバハレーン国籍を持つ男女にある。下院選挙は小選挙区絶対多数制であり、1回目の投票で比較第1位の候補者の得票が有効投票数の過半数に満たない場合は、1週間後に上位2名による2次投票(決選投票)を行なう。立候補者が1名のみの場合は無投票当選となる。投票日は通常土曜日に設定されている。
選挙区は基本的に人口が集中する北部一帯に多くの選挙区が割り当てられている。2014年9月に地方行政区分の再編(中部県の廃止)とともに選挙区割りが再編されて、一票の格差は2倍以下となった。それ以前はムハッラク県の選挙区と南部県の選挙区で10倍以上の格差があったが、依然として南部の方が一票の価値が高い傾向にある。この南北の人口格差はバハレーンに固有の人口分布を背景とするが、南部に居住するスンナ派諸部族が最大の政府支持層で無投票当選者がいる一方、北部では人口で多数派を占めるシーア派が議席の獲得において不利となるような選挙区割りとなっている。野党側は政府によるゲリマンダー(意図的な選挙区操作)であると批判し、是正もしくは比例代表性の導入を要求している。
投開票については、各県ごとに選挙管理委員会が設置され、各投票所では裁判官が投開票を管理する。投票所は各選挙区に1箇所設けられ、会場は基本的に小学校が使用される。また、各選挙区内の投票所とは別に、「ゼネラル・センター」と呼ばれる選挙区外投票所が、空港やサウジアラビアとの連絡橋のサービス・エリア、ショッピング・モール、軍の病院など国内10箇所に設置されている。有権者登録がオンラインで照会できるため、どのセンターであっても、選挙人は自分の選挙区への投票ができる。在外公館での在外投票も可能である。各投票所内では、裁判官以外に立候補者が指定した代理人が1名のみ立ち会うことが可能であるが、ゼネラル・センターや在外投票所では、立候補者もしくは代理人が立ち会うことは認められていない。そのため、会場によっては外部からの監視の目が届きにくく、野党側は政府に都合の良い立候補者が当選するような得票・集計の操作がなされていると批判している。バハレーンでは、軍人や警察官も選挙権を行使でき、かつ多くがスンナ派の「政治的帰化」者であることから、野党の目が届かないゼネラル・センターでの、政府の動員による投票が疑われている。投票終了後は、裁判官の指揮の下に開票が行なわれ、各県の選挙管理委員会で集計結果が発表される。集計に対する異議申し立てなどはあるものの、いずれも却下されている。
第5回下院選挙2018年
一次投票 2018年11月24日 9議席確定 投票率(有権者登録ベース)67%
二次投票 2018年12月1日 31議席確定
最大野党のイスラーム国民協約協会Jamiyat al-Wifaq al-Watani al-Islamiyah(以下、通称であるウィファークと表記)をはじめ多くの野党の指導者が立候補を禁じられていたことを受け、野党は選挙のボイコットを呼びかけていた。立候補は無所属候補で、一次投票で過半数を獲得する有力候補が少なく、新人には大きな機会となった。女性候補は前回から倍の6名が当選し、ファウズィーア・ビント・アブドゥッラー・ザイナルFawzia bint Abdullah Zainalが初の女性議長に選出された。
第4回下院選挙2014年
一次投票 2014年11月22日 6議席確定 投票率(有権者登録ベース)54%
二次投票 2014年11月29日 34議席確定
アラブの春後初の下院選挙となった。告示前の2014年9月に地方行政区の再編とあわせて選挙区割りが大幅に変更され、1票の格差は2倍以内に緩和された。しかし、国民の多数派であるシーア派を支持基盤とする野党勢に不利な状況は変わらず、選挙手続きの透明性と公正さが確保されていないことを批判していたウィファークをはじめ野党は選挙のボイコットを呼びかけた。投票日当日は、北部県や首都県の一部で、治安部隊が厳重な警戒で投票所へのアクセスを遮断したり、逆にボイコットを呼びかける若者集団が投票所へ通じる道路を封鎖するといった光景がみられた。スンナ派イスラーム主義の政治団体は選挙に参加したものの結果はふるわず、ほぼ政府支持の無所属議員に占められた。女性は3名が当選した。
政治団体・会派名 | 獲得議席数 | 1次投票の得票率 |
---|---|---|
アサーラ(スンナ派) | 2 | |
ミンバル(スンナ派) | 1 | |
無所属(政府支持)* | 37 |
補欠選挙 2012年
現職議員のガーニム・ブアイナインGhanim al-Buainainが外務担当国務相に任命されたことにより空席になった議席の補欠選挙が2012年6月16日に実施された。
補欠選挙 2011年
一次投票 2011年9月24日 9議席確定(4議席は無投票当選)
二次投票 2011年10月1日 9議席確定
2011年2月27日に真珠広場でのデモに対する政府の暴力に抗議してウィファーク所属議員18名が辞職したことに伴う補欠選挙が行われた。立候補者はすべて無所蔵で、3名の女性が当選した。
第3回下院選挙2010年
一次投票 10月23日 31議席確定 投票率(有権者登録ベース) 67.7%
二次投票 10月30日 9議席確定
前回に続き野党も参加し、ウィファークはシーア派が多数を占める18の選挙区すべてに候補者を立て、すべての議席を獲得した。比較第一党であったが議長職は政府支持の無所属に譲り、副議長職を獲得した。
政治団体・会派名 | 獲得議席数 | 1次投票の得票率 |
---|---|---|
ウィファーク(シーア派) | 18 | 48.5% |
アサーラ(スンナ派) | 3 | 3.3% |
ミンバル(スンナ派) | 2 | 7.1% |
無所属(政府支持)* | 17 |
* ウィファークの得票総数は79313票(1選挙区で無投票当選あり・有効投票数の48.5%)
* 無所属は全てスンナ派
* 女性議員:1(ムスタクバル→無所属。南部州から選出、立候補者1名による無投票当選)
州 | スンナ派 | シーア派 | 計 |
---|---|---|---|
首都県(マナーマ) | 2 | 6 | 8 |
ムハッラク県 | 7 | 1 | 8 |
北部県 | 2 | 9 | 9 |
中部県 | 5 | 4 | 9 |
南部県 | 6 | 0 | 6 |
計 | 22 | 18 | 40 |
第2回下院選挙2006
一次投票 2006年11月25日 30議席確定 投票率(登録有権者ベース)73%
二次投票 2006年12月2日 10議席確定 投票率(同上)69%
前回ボイコットしていた反政府勢力は、2005年に制定された政治団体法に基づき野党として参加した。最大野党のウィファークはシーア派が多数をしめる18選挙区のうち17選挙区に所属候補を立て、1選挙区で協力する無所属候補を支援し、いずれも議席を獲得した。
政治団体・会派名 | 獲得議席数 | 1次投票の得票率 |
---|---|---|
ウィファーク(シーア派) | 17 | 61.8% |
ミンバル(スンナ派) | 7 | 11.0% |
アサーラ(スンナ派) | 5 | 7.4% |
無所属(与党系) ムスタクバル | 10 (4) | |
無所属(野党系) | 1 |
* ウィファークの得票総数は86405票(有効投票数の61.76%)。
* 与党系無所属はいずれもスンナ派。うち4名は2008年にムスタクバルを結成。
* 野党系無所属はワアド系のスンナ派だが、ウィファークの支援を受けた。
* 女性議員:1(無所属→ムスタクバル。南部州から選出、立候補者1名による無投票当選)
県 | スンナ派 | シーア派 | 計 |
---|---|---|---|
首都県(マナーマ) | 3 | 5 | 8 |
ムハッラク県 | 7 | 1 | 8 |
北部県 | 2 | 9 | 9 |
中部県 | 5 | 4 | 9 |
南部県 | 6 | 0 | 6 |
計 | 23 | 17 | 40 |
第1回下院選挙2002年
一次投票 2002年10月24日 19議席確定 投票率(登録有権者ベース)53.48%
二次投票 2002年10月31日 21議席確定 投票率(同上)43%
新憲法下での初めての選挙であった。反政府勢力は憲法の内容およびその制定手続きが国民行動憲章の精神から後退していると批判し、選挙への参加をボイコットした。
政治団体・会派名 | 獲得議席数 | 1次投票の得票率 |
---|---|---|
ミンバル(スンナ派) | 5 | 12.6% |
アサーラ(スンナ派) | 7 | 12.2% |
イスラーム会派 ラービタ(シーア派) シューラー協会(スンナ派) | 8 (3) (2) | 4.4% |
独立会派 エコノミスト | 8 (3) | 2.8% |
諸派(世俗リベラル) | 3 | 2.8% |
無所属 | 9 |
* ボイコット:ウィファーク、ワアド、アマル、タガンムウ
* 諸派(世俗リベラル)は旧共産系・民族主義のタカッドミーほか。2006年選挙前にワフダ(国民連合)として会派結成。
* 独立会派のうち3名が2006年選挙前にエコノミスト会派を結成。
* 女性議員:0
県 | スンナ派 | シーア派 | 計 |
---|---|---|---|
首都県(マナーマ) | 4 | 4 | 8 |
ムハッラク県 | 7 | 1 | 8 |
北部県 | 5 | 4 | 9 |
中部県 | 6 | 3 | 9 |
南部県 | 6 | 0 | 6 |
計 | 28 | 12 | 40 |